「摩訶般若波羅蜜」講義(4)

觀自在菩薩の行深般若波羅蜜多時は、渾身の照見五蘊皆空なり。五蘊は色受想行識なり、五枚の般若なり。照見これ般若なり。この宗旨の開演現成するにいはく、色即是空なり、空即是色なり、色是色なり、空即空なり。百草なり。萬象なり。般若波羅蜜十二枚、これ十二入なり。また十八枚の般若あり、眼耳鼻舌身意、色聲香味觸法、および眼耳鼻舌身意識等なり。また四枚の般若あり、苦集滅道なり。また六枚の般若あり、布施、淨戒、安忍、精進、靜慮、般若なり。また一枚の般若波羅蜜而今現成せり、阿耨多羅三藐三菩提なり。また般若波羅蜜三枚あり、過去現在未來なり。また般若六枚あり、地水火風空識なり。また四枚の般若、よのつねにおこなはる、行住坐臥なり。

  

釈迦牟尼如来会中有一苾蒭、竊作是念、「我応敬礼甚深般若波羅蜜多。此中雖無諸法生滅、而有戒蘊、定蘊、慧蘊、解脱蘊、解脱知見蘊施設可得、亦有預流果、一来果、不還果、阿羅漢果施設可得、亦有独学菩提施設可得、亦有無上正等提施設可得、亦有仏法僧宝施設可得、亦有転妙法輪、度有情類施設可得」

釈迦牟尼如来の会中に一の苾蒭あり、竊かに是の念をなさく、「我れ甚深般若波羅蜜多を敬礼すべし。此の中に諸法の生滅無しと雖も、而も戒蘊・定蘊・慧蘊・解脱蘊・解脱知見蘊の施設可得有り、また預流果・一来果・不還果・阿羅漢果の施設可得有り、また独覚菩提の施設可得有り、また無上正等菩提の施設可得有り、また仏法僧宝の施設可得有り、また転妙法輪・度有情類の施設可得有り」》

仏知其念、告苾蒭言、「如是如是、甚深般若波羅蜜、微妙難測」

《仏、其の念を知して、苾蒭に告げて言く、「是の如し、是の如し。甚深般若波羅蜜は、微妙なり、難測なり」》

而今の一苾蒭の竊作念は、諸法を敬礼するところに、雖無生滅の般若、これ敬礼なり。この正当敬礼時、ちなみに施設可得の般若現成せり。いわゆる戒定慧乃至度有情類等なり、これを無といふ。無の施設、かくのごとく可得なり。これ甚深微妙難測の般若波羅蜜なり。

  

天帝釈問具寿善現言「大徳、若菩薩摩訶薩、欲学甚深般若波羅蜜多当如何学」

《天帝釈、具寿善現に問うて言く、「大徳、若し菩薩摩訶薩、甚深般若波羅蜜多を学せんと欲はば、まさに如何が学すべき」》

善現答言、「憍尸迦、若菩薩摩訶薩、欲学甚深般若波羅蜜多、当如虚空学」

《善現答へて言く、「憍尸迦、もし菩薩摩訶薩、甚深般若波羅蜜多を学せんと欲はば、まさに虚空の如く学すべし」》

しかあれば、学般若これ虚空なり、虚空は学般若なり。

天帝釈、復白仏言、「世尊、若善男子善女人等、於此所説甚深般若波羅蜜多、受持読誦、如理思惟、為他演説、我当云何而守護。唯願世尊、垂哀示教。

《天帝釈、また仏に白して言さく、「世尊、若し善男子善女人等、此の所説の甚深般若波羅蜜多に於て、受持読誦し、如理思惟し、他の為に演説せんに、我れまさに云何が守護すべき。ただ願はくは世尊、哀を垂れ示し教へましませ」》

爾時具寿善現、謂天帝釈言、「憍尸迦、汝見有法可守護不」

《爾の時に具寿善現、天帝釈に謂つて言く、「憍尸迦、汝、法の守護すべき有るを見るや不や」》

天帝釈言、「不也、大徳、我不見有法是可守護」

《天帝釈言く、「不や、大徳、我れ法の是れ守護すべき有ることを見ず」》

善現言、憍尸迦、若善男子善女人等、作如是説、甚深般若波羅蜜多、即為守護。若善男子善女人等、作如所説、甚深般若波羅蜜多、常不遠離。当知、一切人非人等、伺求其便、欲為損害、終不能得。憍尸迦、若欲守護、作如所説。甚深般若波羅蜜多、諸菩薩者無異、為欲守護虚空」

《善現言く、「憍尸迦、若し善男子善女人等、是の如くの説をなさば、甚深般若波羅蜜多、即守護すべし。若し善男子善女人等、所説の如くなさば、甚深般若波羅蜜多、常に遠離せず。まさに知るべし、一切人非人等、其の便を伺求して、損害を為さんと欲んに、終に得ること能はじ。

 憍尸迦、若し守護せんと欲はば、所説の如くなすべし。甚深般若波羅蜜多と、諸菩薩とは異なること無し、欲守護虚空と為す」》

しるべし、受持読誦、如理思惟、すなはち守護般若なり。欲守護は受持読誦等なり。

先師古仏(の)云(く)、 渾身似口掛虚空  《渾身口に似て虚空に掛り》

不問東西南北風  《東西南北の風を問はず》

一等為他談般若  《一等他と般若を談ず》

滴丁東了滴丁東  《滴丁東了滴丁東》

これ仏祖嫡嫡の談般若なり。渾身般若なり、渾他般若なり、渾自般若なり、渾東西南北般若なり。