帰命
道元禅師の現成公案の中に次の三つの文書がでてきます。 「迷を大悟するは諸仏なり、悟りに大迷なるは衆生なり。」 「人、はじめて法をもとむるとき、はるかに法の辺際を離却せり、法すでにおのれに正伝するとき、すみやかに本分人なり。」 「身心に法いまだ…
「『善いことをする』という悪いこともある。」(澤木興道) 澤木老師がここで言わんとしているのは、何も「善いこと」自体が悪いというのではなく、善いことをしていると、「オレはいいことをヤッタ」「だからオレはいいヤツだ」と思ってしまう自分が悪いの…
自分さえよければいい、というのは私たち人間の悲し い根性ですが、そういう根性に気付き、転回させること に宗教の要があると思います。 ところが、下手をすれば宗教の中にまで「自分さ えよければいい」という根性を持ち込んで、自分の信仰 を間違った方向…
本当にオメデタイことは何か。 先月は菩薩の行き方について、菩薩は六道に自由に生まれ変わって、一切の衆生を救おうと しているのだ、と書きました。 六道に生まれ変わることを仏教用語で「流転」と言いますが、下手をすれば「流転」を死ん だ後のことだと…
天国 皆は天国に行きたがっているようですが、一体どうしてでしょうか。 この世で善いことをすれば、死んだあとに天国にのぼれると言われています。悪いこと をすれば、地獄や餓鬼道に落ちたり、畜生や阿修羅として生まれ変わったりします。果た してどうな…
苦 仏教を一言で表すならば「苦」だと思います。 お釈迦様は生老病死の四苦に気づき出家し、悟り、そして説法も「一切皆苦」という第 一の聖諦(しょうたい・聖なる真理)から始まります。また、死ぬ直前、苦・執・滅・道 という四聖諦(ししょうたい)の理…
取り引き 不景気のなか でもお寺だけはお金に困らないと思われているのか、最近よくこん な電話をいただいています。 「ご住職様、どうですか、株の取り引き、やってみませんか 。金の相場も、面白いですよ、もうかりますよ。」 何を勘違 いしているのか、悟…
公案 禅宗では仏法の道理を「公案」で表すことがあります。ところが、この公案は問題定義の 形をとることが多いです。例えばこのような公案があります。 人が木に登って、手も足も使わず、口で枝をくわえてぶら下がり、木の下の人は、「一言 でもいいから、…
煩悩の眼鏡 安泰寺は修行道場です。一般に言われる修業ではなく、仏道修行の道場です。「仏道」の 「仏」という字は梵語で「ブッダ」といい、「覚者」という意味です。「道」は梵語の「 ボディ」にあたり、「覚智」です。ですから、安泰寺という修行道場は精…
如常 お寺の言葉でよく「如常」(にょじょう)とか「如法」(にょほう)とか言います。「如 常」・・・いつものように、いつも通り、という意味でしょうか。夜、皆が集まって一日 を振り返っているときによく「今日は如常でした」などといいますが、それはい…
私は34歳のドイツ人。この不思議な国日本に来てから,もうすでに10年間が経ったが,日本語もいまだ不自由だし,日本的な考え方・感覚にはなかなか馴染めない。私だけでなく,多くの日本人にとって特に分かりにくいのは日本の政治だと思う。権力のある立…
初めて安泰寺に上がって,師匠にあったのは12年前,台風19号で参道が流されていたあとだった。久斗山に「独坐」しているこの場所にすぐ魅せられた。そして,来たばかりの私が堂頭さんに最初に言われたのは(みながそう言われるように)「安泰寺をお前が…
花は愛惜にちり、草は棄嫌におふるのみなり。 という道元禅師の有名なことばがあります。この言葉は普段、悟り(花)を追い求めるほど悟りは遠く逃げてしまい、煩悩(草)を切り捨てようと思うほど煩悩が深くなる、という意味合いで解釈されます。私はむしろ…
安泰寺の住職、宮浦信雄堂頭は二月十四日、ブルドーザーで除雪中、つづらい橋の近くで参道から川に転落し、死亡しました。五十三歳でした。 新しい住職が決まるまで、残された弟子達等が留守番をつとめています。 堂頭さんというと笑っている姿を思い出しま…