觀自在菩薩の行深般若波羅蜜多時は、渾身の照見五蘊皆空なり。五蘊は色受想行識なり、五枚の般若なり。照見これ般若なり。この宗旨の開演現成するにいはく、色即是空なり、空即是色なり、色是色なり、空即空なり。
無一物中無尽蔵、花有り月有り楼台有り。
瓶
人間たちは狭い方を内側にして
重宝して暮している
酒や醤油や薬品などをそこに入れて
人間らしく ちんまりと
だが瓶というこの「物」たち自身には
人間たちが外側のつもりでいる
広い方の側が内側なのかも知れない
そして「物」らしくそこに
おおらかに入れているのかも知れない
その肌で直接つつむようにして
人間も地球も銀河も
宇宙のすべての存在をすっぽりと
どんなに小さな
たとえばあの目薬の瓶たちでさえもが
めいめいに ちんまりと
ほかの瓶たちの中に坐り合ったままで
(まど・みちお)