典座教訓⑤

典座教訓(https://eiheizen.jimdofree.com/%E5%85%B8%E5%BA%A7%E6%95%99%E8%A8%93/

…粥時の菜を調へ、次に今日齋時の所用の飯羮(はんこう)等を打併(たへい)す。盤桶(ばんつう)、並に什物調度し、精誠浄潔に洗灌し、彼此(ひし)、高處に安ずべきは高處に安じ、低處に安ずべきは低處に安ず。高處は高平、低處は低平。

 梜杓(きょうしゃく)等の類、一切の物色、一等に打併し、眞心に物を鑑し、輕手に取放し、然る後に、明日の齋料を理會(りえ)す。先づ米裏に蟲有るを擇び、緑豆、糠塵、砂石等、精誠に擇び了る。米を擇び菜等を擇ぶ時、行者(あんじゃ)諷經し竈公(そうこう)に囘向す。

 次に菜羮(さいこう)を擇び物料を調辨す。庫司(くす)に隨て打得す所の物料は、多少を論ぜず、麤細(そさい)を管せず、唯だ是れ精誠に辨備するのみ。切に忌む、色を作し口に料物の多少を説くことを。

 竟日通夜(ひねもすよもすがら)、物來りて心に在り、心歸して物に在り、一等に佗と精勤辨道す。 三更(さんこう)以前は、明曉(みょうきょう)の事を管し、三更以來は、做粥(さしゅく)の事を管す。

(A: 石霜山慶諸禪師、潙山の法會に抵つて米頭と爲る。一日、師、米寮内に在つて米を篩(ふる)ふ。潙山云く、施主物、抛撒すること莫れ。霜云く、抛撒せず。潙山、地上に於いて一粒を拾得して云く、汝抛撒せずと道ふ、這箇は是れ什麼の處よりか得來る。師、無對。潙山又云く、這の一粒子を欺くこと莫れ、百千粒は這の一粒より生ず。師曰く、百千粒は這の一粒より生ず、未審(いぶかし)這の一粒什麼の處より生ず。潙山、呵呵大笑して方丈に歸る。晩後上堂して云く、大衆米裏に蟲有り。『知事清規』) #典座 #教訓 #道元